http://blog.so-net.ne.jp/Shiseigaku/2005-11-06

「O氏」となっているが、私のことだ。事実誤認に満ち満ちているが、議論はしないという卑怯者。

「私の主張を無視するなどもってのほかだ。私が意見をすれば、あまねく全ての人間はすぐさま回答しなければならない。回答せずに私を無視する人は、ファッショ的な迫害者の手先である。
 ここまでくると、依存症に加えて誇大妄想的である。多くの全く面識のない人に対して、いきなり自分の書いたものを送りつけ、回答を執拗に強要する」

 冗談ではない。本当に読んで言っているのか疑わしい。既に国家、公共施設等々が喫煙者に迫害を加えている現実がある以上、疑問に回答する義務があるのは当然である。

「「自分は好きなときに、好きなところでたばこを吸いたい」との個人的な欲求だけである。」

 そのようなことは言っていない。2003年以降、爆発的に禁煙の場所が増えたことを批判しているのであって、電車の中やら病院の中やらでも吸わせろとは私は言っていないではないか。卑劣な個人攻撃の文章である。もっともご当人の言い分は、それはニコチン中毒から来ているらしいが、では喫煙で病気になっただの、橋本龍太郎がヘヴィースモーカーなのは国民の権利を侵害しているなどといって訴訟を起こす連中、「タバコを吸う人の名詞なんかもらいたくない」だの「喫煙者は死ね」だのと言う禁煙ファシストの自己中心性とヒステリーはニコチン依存から来るわけではないのだから、何から来るのか説明してもらいたいね。

 「○氏の著書である「持てない男」シリーズのように、変な理屈をこねずに」

 「もてない男」のことか? シリーズというのは、いったい何冊あるのだろう。十分理屈はこねているよ。

 その下についているコメントだが、意味不明である。これは翻訳の出来もあまり良くないが、それ以前にもともとの文章が意味不明なのである。
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確かに、神経症等の精神疾患を持つ患者のニコチン依存症は治療困難であるが、それにより無駄だとはじめから禁煙治療をあきらめることはないと思われます。(下記参照)

精神疾患既往の喫煙者には禁煙指導の徹底を
メディカルトリビューン 2001年4月26日 (VOL.34 NO.17) p.17

精神科医はカウンセリングで禁煙指導を患者に頻繁に行っていない,とハーバード大学およびマサチューセッツ総合病院たばこ研究治療センター(ともにマサチューセッツ州ボストン)のAnne N. Thorndike博士らは,Nicotine and Tobacco Research(3:85-91)に発表した。

筆頭研究者の同博士は「プライマリケア医と精神科医は,精神疾患患者におけるたばこ関連疾患がもたらす損失を減らす機会をみすみす見逃している」と述べた。同博士らは米国立保健統計センター(メリーランド州ハイアッツビル)が全国的規模で行った外来診療のデータ17万件以上を分析。精神疾患既往のある患者の 4 分の 3 に対して喫煙の有無を聞いた。
しかし,禁煙指導カウンセリングを受けたと答えたのは,喫煙していると答えた者の 4 分の 1 にも達しなかった。

今回の研究によると,禁煙カウンセリングを受ける率は精神疾患のない喫煙者も同じく低いという。従来の研究では,精神疾患を持たない喫煙者が医師の禁煙カウンセリングを受けていたのは同じく25%であった。これまで内科医が精神疾患患者の喫煙に対してどの程度の頻度で取り組んでいるかについてはあまり知られていなかった。

以前の研究によると,精神疾患患者には喫煙の習慣がより強く見られ,禁煙の動機付けも困難と言われる。精神疾患を持つ喫煙者にとって禁煙は難しいかもしれないが,患者が禁煙できないと医師はきめ付けてはならない。「喫煙がもたらす健康に対するリスクは甚大なため,内科医はすべての患者の喫煙問題に対処する必要がある」と同博士は述べた。

この研究によると,米国精神医学会(APA)の現行ガイドラインでは,医師は,動機付けられ禁煙日を定めた精神疾患患者に対して,ニコチン置換療法を行うなど禁煙指導を行うことを勧告している。

同博士らは,少なくとも不安障害を持つ喫煙者では,禁煙カウンセリングをより多く行ったのは精神科医ではなく主治医であったと報告している。
これについて「専門医で対応が違ったのは,大規模な禁煙キャンペーンがまず主治医を対象としており,精神科医は後手となったことによるものかもしれない」と同博士は説明した。
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 まったくと言っていいほど意味不明である。精神科医はカウンセリングで治療するのか?
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 厚生労働省は、喫煙を減らすことによって15年で約1846億円の医療費が削減できるようになると言っている。どういう計算なのか分からないが、年間医療費総額は今のところ30兆円くらいである。月の支出30万円で、減らしたいなあ、と思っている人に、一日一箱吸っているタバコをやめれば9千円の節約ですよ、と言ったら「そうだなあ、やめようかなあ」となるだろうが、毎日60円貯金すれば月に1846円貯まりますよ、と言ったら、おめえ俺をバカにしてんのか、と言われるだろう。それとも1846億円って月額か? この点、厚生労働省へ問い合わせのメールを出したのだが、今もって返事がない。

 ところで山形浩生の以下の文章である。

付記:タバコによって医療費その他の政府負担や社会コストが増えるという点については、すでに挙げたアメリカの Surgeon General が出してる報告書の Chapter 7 でいやというほど論証されている。喫煙が減って人が長生きするようになったら、高齢者の医療は増える。でも、若年層のタバコによる疾病からくる医療費が減るのでそれは相殺される。さらに長生きした人はそれだけ長く働き、社会に貢献し、税金を払う。社会的な医療コストも負担してくれる。その分で高齢者の追加医療費分くらいまかなってもすさまじくおつりがくる。だから喫煙により社会の医療費は明らかに純増となる。だから社会的にも、政府の財政的にも、タバコは大きな負担をもたらしている。ここで使われている便益モデルも、その原単位もきわめて常識的なものでまったく怪しげなところはない。さらにこれは一個の便益計算なんかではなく、多数の(1000 近い)研究論文を参照しつつまとめられている。このように、「煙草を減らすと医療費が削減される、というデータ」は大量にある
 Chapter7というから、これだ。
 http://www.cdc.gov/tobacco/data_statistics/sgr/2004/pdfs/chapter7.pdf

 この章は30頁ほどあるが、山形が言っている箇所に該当するのは、「Health Benefits of Reducing Cigarette Smoking」の節で、僅々6頁しかないが、「まったく怪しげなところはない」どころか、ものすごく怪しい。というのは、山形が言っている「若年層」というのは、どうやらpremature death とされているもののことだろう。これを見ると、

 http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5306a2.htm

 Premature deaths were defined as those occurring among persons aged <65 years.
 とあって、65歳以下で死ぬと「若死に」であると定義されていることが分かる。山形が「若年層」といっているのは、65歳以下のことらしい。ところがこの節は、年齢別に、今後の禁煙政策によって救われる命というのを表にしていて、10-17、18-24、25-44、45-64、65以上、となっている。ところがその数が、むしろ65以下でやたら多いのだが、不思議と死者数については年齢別の表が少ない。山形の言う「すさまじくおつりがくる」の箇所は、今なお発見できない。
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 ところで先日、宮崎哲弥の「アクセス」に出て禁煙ファシズムについて話した。アナウンサーの長峰由紀(?)とかいう人は嫌煙家らしく、私が、歩きタバコをしていても、前から人が来たらタバコは手元へ引き寄せます、と言ったら「後ろの人が迷惑なんです」と言うた。人込みじゃないんですよ、と言ったのだが、実は一瞬意味が分からなかった。歩きタバコをしていると、後ろを歩いている人のところへ煙が来る、という意味なのだとあとで気づいたが、それならちょっと後ろへ下がるとかすればいいのだ。私だって前を歩いている二人のおばさんの話し声がうるさいと思ったら、まあだいたいは追い越す。早足だったら、一秒も立ち止まればかなり遠くへ行く。だいたいクルマが走っている道へ飛び出して、クルマを走らせるのが悪いなどと言う奴はいないだろう。なのに嫌煙家というのは、わざわざ近い場所にいて、自分から遠ざかろうとはせずに喫煙者を悪者扱いする。困ったものだ。               
 さらに長峰は、私が、喫煙者は低学歴、低所得層が多い、と言ったら、ええホントですかあ、などと言っていたが、そんなことは常識である。競馬場とか大衆酒場とか行ったことないのかねこの人は。         (小谷野敦