精読したわけではないので、気になった点を。
比較文学の入門書というのは国文や英文学のと違って、読むべき文学作品のリストというのを載せられないので、学習者はそれとは別に専門としたいものについて学ばなければならない。精力的な編集だが、「言語相対説」サピア・ウォーフの仮説について一項目あるのは疑問である。あれはすでに昔言われたような『雪を表す単語が数百ある」などというのは都市伝説で、かろうじてちょっとした言語の影響がある程度になっているはずだ。
あと江藤淳の『漱石とアーサー王伝説』を比較文学の名著のように取り上げてるがあれは比較文学の博士論文としてもゴミに近いほうだぞ。
(小谷野敦)