グレーヴズのナウシカ

 ナウシカといえば『オデュッセイア』で、オデュッセウスが流れ着いたスキラ島のお姫様である。『エレホン』という近未来小説を書いたサミュエル・バトラー(17世紀にもサミュエル・バトラーという作家がいるので、区別のため「サミュエル・エレホン・バトラー」などと言われる)は、『オデュッセイア』の作者は女であり、このナウシカであるとして『オデッセイの女作者』(1897)を書いた。
https://en.wikisource.org/wiki/The_Authoress_of_the_Odyssey
 あまり学者からは相手にされていないようだが、詩人ロバート・グレイヴズはこれに基づいて、『ホメロスの娘』(1955)という小説を書いた。

Homer's Daughter (Penguin Modern Classics)

Homer's Daughter (Penguin Modern Classics)

これはホメロスから二百年ほどあと、スキラ島の姫であるナウシカが、父の留守の間に男たちから言い寄られる話の合間に、その時は『イリアス』しかなかったところ、自分でオデュッセイアの帰還について叙事詩を書くという話である。ただし、オデュッセイアナウシカと会うところを入れる話は出てこず、読者の知識と想像に任せられている。