詩人・高橋睦郎(1938- 、芸術院会員・文化功労者)が、KADOKAWAの『俳句』の、俳人・黒田杏子の追悼文で書いたことで黒田の家族らがKADOKAWAに抗議し、編集長と高橋が謝罪したというが、別に事実でないことを書いて謝罪したのではなく、事実を書いたことを謝罪したのである。
私は現物を読んだのだが、高橋が書いたのは、黒田の俳句は、有名人との交友を俳句に織り込むことが多くなってあまり俳句は良くなくなっていたということ(瀬戸内寂聴とか)、同世代で、やはり最近死去した大物俳人・大石悦子に会うと言ったら黒田が、「あんな馬鹿女、会わなくていいわよ」と放言したが、会ってみたら全然馬鹿女ではなく聡明な人だったといったことである。
報道記事で気になったのは、大石が別に馬鹿女ではなかった、と高橋が書いていることがいつも抜けていたことで、報道だけ読んだ人が、大石は馬鹿女なのかな、と思ったらまずいだろうと私は思った。しかしある人は、何だか三角関係みたいだと言っていた。
(小谷野敦)