シャーロット・ギルマン(1869-1935)は、米国の作家・女性運動家で、「フェミニジア」とされているのは原題を「ハーランド」といい、1915年、第一次大戦中の作である。
1981年に翻訳されているが、訳者の三輪妙子(1950- )は、ヴァンクーヴァーで二人の子供を自宅で自然分娩し、帰国後は母の助けを借りて子育てしてきた、反原発、反捕鯨のかなり怖い感じの人で、訳文も「男」に対して「女性」であって、男性差別主義的なところが見える。
作品は、テリー、ジェフ、ヴァンディックという三人の男が、どうやら南米らしいところを探検して、二千年前から女だけで生きている「ハーランド」に入り込むというユートピア小説である。その成り立ちは、二千年前に病気のため男が死に絶えてしまったが、一人の女がグランドマザーとなって単性生殖で女子五人を生み、さらにそれぞれが五人ずつ生みして、女だけで生殖するようになったという。
この国には犯罪がないが、というのは、そのような傾向をもつ成員が発見されると、子供を産まないようにコントロールするからだという。また途中で人口が増え過ぎた時は、人口調節のため子供の出産を抑制したという。要するに優生学と強制的産児制限で成り立っているので、あまり知られていないのはそのせいだろう。
ところでこの三人の男は、この国の娘とそれぞれ恋仲になるのだが、彼女らはセックスというものを知らないので拒み、テリーは無理やり妻を強姦しようとして、元の世界へ送り返されることになり、三人は妻たちともとの世界へ帰るという結末になっている。
ところで私は十年以上前にさる劇団の演劇を観たあとのトークショーに参加させられたことがあり、その時誰かが「だって夫婦はセックスしないでしょう」と言ったから、「夫婦ってセックスしないんですか」と訊いたら誰も答えなかったということがあった。
まあ、男女平等が進行すると、夫婦のセックスは困難になる。結婚して三年くらいがいいところか、十年もしたらしなくなるのが普通だろう。独身を通している人は知らないかもしれないが。