著書訂正

久米正雄伝』
 241p、11行目から242p、11行目までの帝劇での件は、大正八年のことだが、この記述では七年のことになっている。どこかで手違いがあったと思われる。

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高田里恵子の新刊『女子・結婚・男選び』(ちくま新書)を読んでいたら、『金色夜叉』のお宮と貫一はもうセックスしていた、とあって、「夫」と自称しているから、とあり、柄谷行人の『近代文学の終り』に書いてある、という。私は柄谷のこの本を手にとったことすらなかったので、図書館で借りてきて見たら、まあ書いてはあるが、「夫婦同然」ということを問題にしている。それで高田さんの本をよく見たら、言っているのは編集者で、高田さんは「ふーん」とか言っている。徳川期の文藝では、セックスしたら「夫」「妻」と言い、婚約者でもそういうのである。『八犬伝』の浜路は、信乃とはセックスしていないが、それでも「夫の敵」と言って左母二郎に切り付けている。
 まあ私は、柄谷が未だに「恋愛輸入品説」を唱えているのに驚いたが、まあこっちだって新刊を手にもしないくらい、この人には何も期待していないのだからしょうがない。