瀬戸内寂聴の表情

私は原一男井上光晴を撮った「全身小説家」を、2000年ころに一度観かけて、あっこれはガンで死ぬんだと思い、つらくて観るのをやめたが、最近になって、改めて観た。井上が文学伝習所の女性参加者を次々と食ってしまうあたりが話題になっていたようだが、私はむしろ、ガンの民間療法の山師が、井上に、ガンが良くなっているとべらべら喋っている時に、そこにいる瀬戸内寂聴がすごく暗い顔をしてうつむいているのがひどく印象に残った。山師の言っているのはまったくの嘘なわけで、山師が帰ったあと、井上が、説得力がまったくなかった、とカメラに向かって話すのだが、瀬戸内寂聴の暗い表情がいちばん印象に残った。