森茉莉書簡集「ぼやきと怒りのマリア」を半分読む

森茉莉というのは、若いころ『甘い蜜の部屋』を読んで、こりゃたまらんと思ってあとは読まなかった。「ドッキリチャンネル」を何かの必要があって覗いただけである。しかしショーノヨリコの小説を読んで最近の書簡集があるのを知り、新潮社の担当編集者だった小島千加子が編纂して筑摩書房から出ているのを、図書館から借りてきて読んだら、最初のほう、茉莉が室生犀星にかわいがられて、娘の朝子、萩原葉子と大物の娘同士で仲良くしているところへ、『父の帽子』がエッセイストクラブ賞をとってから小島が担当になって『新潮』や『群像』から小説の注文が来てひやーとなっているあたりが大変面白かった。その後犀星が死んで、入れ替わりのように三島由紀夫が茉莉のファン兼友人になってくれるが、茉莉のBL小説はフランス映画の美男俳優をイメージして書かれているのだと知り、水原紫苑みたいな人だったんだなあ、と思った。

 新潮社から出た本を講談社のロマンブックスという新書判にしてしまい新潮社への義理を欠いた事件もあったらしいが、「A子」とかいう誰だか分からない人が敵手になるあたりから飽きてきて、まあこれはいいや、となった。アマゾンレビューでは小島が冷たい、茉莉は友情を求めているのに、と書いている人がいたが、それは孤独な著者と編集者ではありがちなことで、しかし茉莉には葉子や朝子がいたからいいではないか、と思った。