谷沢永一と呉智英

谷沢永一は「天皇制」という言葉を使うべきでないと言って、今日の右翼のそういう方面の源流となっている。私は、大日本帝国憲法天皇の存在が規定されてからは「天皇制」に違いないではないかと反論したのだが、谷沢は答えないで死んでしまった。しかし今考えてみると、谷沢は天皇というのを「神」だと思っていて、「神制度」とかキリスト教徒やイスラム教徒が言われたら感じるように感じていたのではないか、だとしたら私の反論は通じなかっただろうと思った。

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呉智英は、会田誠が訴えられた件について、では「好色一代男」を講義すると訴えられるのか、と書いている。これは特に会田側に立って言っているのではないのだが、私は現に東大の一年生男子に、ヘミングウェイの小説にセックスシーンがあるから教材として不適切だと思って出席しなかった、と書かれたことがあり、提訴まで一歩手前である。東大あたりだと純粋培養の学生がいるからそういうことがあるが、呉は知らないんじゃないかと思った。