栗本鋤雲:大節を堅持した亡国の遺臣 (ミネルヴァ日本評伝選) アマゾンレビュー

小野寺龍太
著者が右翼っぽい
星3つ 、2021/06/25
1945年と敗戦の年生まれの九大工学部名誉教授だが、年齢の割に右翼っぽい。シナと書いたり九条改憲論らしい(150p)のはともかく、天皇崇拝家で、維新前のアイヌについて「日本の皇化がまだ北緯四九度の地までは及ばず」(69p)などと書いてあるのは唖然とした(あとがきを見たら平川祐弘の推薦で書いたというので納得した)。他はほかに伝記のない栗本鋤雲の伝記として特に問題はないが、212p「巌谷一六の翻訳小説「ロミオとジュリエット」「マクベス」」とは何のことだろう。一六は漢詩人だが。あと井伊直弼を本心は鎖国派だと言っているが、当時は水戸斉昭が生きていたのだから、慶喜を将軍にすれば斉昭が介入してくるから、一橋派を弾圧したので、そこが分かっていないようである。あと「塩辛の作り方」といって、蛆がわいたのを放置しておくことなどが書いてあったり、パリ滞在中の記述によく分からないところがあった。徳川昭武を「民部公子」といきなり呼んでいるが、これは民部大輔だったからで、「民部公子」という呼称がどこから出たのか記しておかないといけないだろう。