月曜に、久しぶりに本郷の江知勝へ行ったら、個室なのに灰皿がなく、外で吸ってくれと仲居が言う。驚いて店主を呼んだら、東京都から、禁煙にするよう要望が来ていると言う。課長通達かと思ったから訊いたら、「いやそれが誰からか分からないんですよ、ただ東京都とだけあって」。
 というので灰皿は無事持ってきてもらい、東京都、法の定めもないのにとんでもないことをしやがって、と思ったのだが、課長通達であれ、責任者の名前がない公文書があるはずがない。偽文書ではないかと思い、東京都に電話して飲食店などの担当部局へつないだら、そういう文書を出すというのは考えられない、うちではない、と言う。
 さてはどこかの禁煙ファシスト団体が公文書偽造をやったな。
ところでその都庁の職員が江知勝を知らなかったから、驚いて、地方の人ですかと訊いたら東京の人だというから、「西のほうですか」と訊いたら二十三区内だという。
小谷野敦