大学の裏シリーズ

 前からいろいろ書いているのだがなかなか浸透しないのでまた書く。
 学者の履歴で「博士課程修了」と書いてあっても、それが1995年以前のものだと、嘘であることが多い。というのは、それ以前は人文系で、大学院にいて直ちに博士号をとるということがあまりなかったから、「単位取得満期退学」のことを「修了」と通称していたからである。
 戦前の場合は、帝国大学は年齢的にも大学院相当なので、卒業の後大学院にいても、それはいわば腰かけである。博士号は、文部省から与えられることもあれば、論文を書いてもらうこともあった。戦後は、修士課程、博士課程というものが出来、学者になるなら普通は修士号はとり、博士課程を中退する。
 だから、履歴を見ても「博士課程修了」をにわかに信じてはいけない。厄介なのは「大学院修了」と書いてあるもので、果たして修士修了(で助手とかになった)のか、博士課程満期退学なのか、これだけだと分からない。じゃあ、満期じゃない退学はないのかといえば、もちろんある。後輩の松居竜五は博士課程一年で退学して留学生担当講師になった。博士号とればいいのに。
 さて、もう一つは、専任が非常勤講師をやる理由である。今はたいてい、大学の雑務が忙しいとみな言うのに、専任(本務校という)があっても非常勤をよそでやる人がいて、専任のない人の仕事を奪っている。これは、雇う側からすれば、偉い先生にうちでもやってもらいたいという立派な理由や、面倒な審査をしなくて済む(本務校があるならまともな人だという前提がある)といった理由からだが、やる側の理由としては、だいたい、
1、住宅ローンや子供の教育などの小遣い稼ぎ
2、義理があって断れない 
3、妻が怖いのであまり自宅にいたくない
4、共学大の男の教員が女子大に呼ばれて喜んで行く
 などがある。しかし侮れないのが、下級の大学の専任の人が上級大学の非常勤をすると、
5、それ自体ステータスである
6、優れた学生を教えられる 
 といった理由でやることで、東大で非常勤をしている人などは、おおむねこの理由である。
 しかし、履歴書にずらずらと非常勤歴が書かれるのだが、これは一般人にはどうでもいいことで、ウィキペディアで非常勤歴などが書き写してあるとだいたい全削除している。