白い巨塔

 ドラマ版「白い巨塔」の一、二話をDVDで観た。石坂浩二の娘が大学の仏文科の大学院にいて「今年は卒業ですって」。大学院は「卒業」したりしないが、それは別に言葉の問題ではなくて、修士の修了ならば、博士課程へ行くのかとかそういうことが問題になるわけだし、博士課程修了なら博士論文を書くわけだし、昔ながらの「単位取得満期退学」を「修了」と称する類であるなら、「卒業」とはとうてい言えないわけで、だいたいこの娘は腰掛で大学院へ行っているのか、しかもどこの大学だ、というような話になるはずで、これは原作にはない設定だから、井上由美子は大学院のことをよく知らないらしい、と分かった。
 何しろ四十年も前の原作だから、いかにも大時代なのだが、教授夫人の「くれない会」なんてのはご愛嬌として、財前が患者からのお菓子を受け取ってしまうのはありえないのであり、私が阪大にいた頃、既に、教科書会社から送ってくるお茶ですら受け取ってはいけないことになっていた。だいたい大学教授が腹黒いといっても、ああいう風に整然と腹黒いわけではなくて、もっとだらしないというのが実態であり、国立浪速大学助教授といえば阪大助教授で、それなら私と同じだと思うと、あんなところで教授になりたがる奴の気が知れないということもあるが、まあ医学部だからまた話は別であろうが、一般視聴者がこういうドラマを観て、阪大教授といえば大層なもので、我慢していればなれるその地位を捨て去るなんて何ともったいない、などと考えるかと思うとちと苦笑されるのであった。