- 作者: 小谷野敦
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2011/03/25
- メディア: 単行本
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p.23 「松平信康」は「松平元康」か「徳川家康」
p.45 「天保六花撰の一人・平手造酒」→「『天保水滸伝』の平手造酒」
p.69 平頼綱は「御家人」ではなく「得宗家御内人」
p.72 「肥前佐賀藩主」→「肥前平戸藩主」
p.91 「竹腰三叉」→「竹越三叉」
特記訂正
p.100に「有職読み」という語が出てくるが、このような言葉は存在しない。これは2006年何者かによってWikipediaに立項され、その内容がいかにもありそうだったため、以後増補が続けられてきたもので、2010年9月9日読売新聞西部版夕刊に、こんなコラムがある。
きょうは52回目の誕生日である。馬齢を重ねるたびに思うのは「民也」という自分の名前のことだ。
命名の理由を父親に何度も聞いたが、説明があやふやで、結局はっきりしない。これが少年期からのコンプレックスになっている。さらに残念なのは、有職(ゆうそく)読みがさまにならないこと。
偉人の名を敬意を払って音読みすることだが、例えば藤原定家から二宮尊徳、伊藤博文、現代の吉本隆明まで、テーカ、ソントク、ハクブン、リューメーと呼べばちょっと偉そうで、ずっとうらやましかった。記事にある人名まで有職読みできるかつい考えてしまうほどで、われながら変なあこがれだと思う。
「矢」とのみあるが民也という名があるので半匿名の記者によるもので「夕影」という題だが、この記者は恐らくWikipediaの記述を信じたものであろう。しかし「故実読み」はあっても「有職読み」はいかなる辞書事典類にもない。調査してくれた人によると、荻生待也『日本人名関連用語大辞典』(遊子館、2008)にのみあったというが、荻生はhttp://ucchiesr39.jimdo.com/この人で、恐らくWikipediaの項目から信じて書いたものと思われる。なお「故実読み」は「菅丞相」を「かんしょうじょう」と読む(本来はじょうしょう)の類である。今後、調査確認を続ける。