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(第二回)菅直人の返答希望。

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 サルマン・ラシュディの『真夜中の子供たち』を読み始めて、なんだまたあれか、と思って少し読んだがやめてしまった。
 こういう、三代か四代くらいの一族の歴史を描く年代記小説というのは近ごろ大流行で、たいていは作者自身の家をモデルにしている。その源流はトーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』(1901)で、ほかにフォークナーの『アブサロム、アブサロム!』(1936)、パール・バックの『大地』(1932)があるが、私に面白かったのはフォークナーで、その後の『百年の孤独』や『枯木灘』以下、たいていはフォークナーの亜流である。北杜夫『楡家の人びと』はむろんマンの真似。たいていは途中に戦争があって、変人のおじさんかおばさんが出てくる。
 私はこういう小説に飽き飽きしている。有吉佐和子もよくこういう小説を書いたが、こっちは女代々が主人公で、直木賞をとった佐藤得二『女のいくさ』もそれ。有吉の場合、『紀ノ川』『鬼怒川』など川の名前が題名になる。
 あと『チボー家の人々』というのもあるが、ある時期までノーベル文学賞はこういうのが大好きだったらしく、マルタン=デュ=ガールもバックもマンも、これで受賞している。アルンダテイ・ロイのやつもそうだったな。
 もう私にしてみればみなフォークナーの亜流に見えるのである。あと、有吉佐和子系はただ着物とか装飾品のことがこまごま書いてあるだけだし、いずれも富裕な家であるというのが面白くない。