リダイヤル

 『妻はストーカーに殺された』という本がある。福岡のほうで、1997年10月28日、大学生が家に押し入り、著者の妻と母に包丁で切り付け、二人とも死に、しかし心神喪失状態だったため不起訴となった事件の、遺族が書いたものである。私はこの本を、書店か図書館で立ち読みしていて、ふと引っかかったことがある。
 犯人は当時21歳、長女の高校時代の同級生で、その二月ころから、家に石を投げたり、無言電話がかかってきたりしていた。家側では、この男ではないかと目星をつけていろいろ調べていたが、ある時、電話のあとで「リダイヤル」するとその男が出た、と書いてあったのである。
 リダイヤルして掛かったなら、誰かがその直前にその家からその男に電話したことになる。もう8、9年前になろうか、私はこれが引っ掛かり、この事件を担当していた現地の新聞記者に電話を掛けて聞いてみた。すると「いや、電話番号表示とか、じゃないですか」と言いつつ、「この手記を書くのは娘さんとかに反対されたみたいで…」と言っていた。
 しかし調べてみると、ナンバーディスプレイのサービスが始まったのは1998年、福岡では試験的に1997年10月に導入されている。しかし男は9月に警察に任意同行を求められ、否認して釈放され、以後嫌がらせはなくなったとあるから、それ以前である。もし「リダイヤル」して出たのであれば、男に電話していたのは、その長女としか思えないのである。
 2005年の「読売新聞」は「いまだ癒えぬ心の傷」みたいな記事を載せており、真相はいまだ闇の中、とある。
 刑法39条については私は廃止論だが、この事件に関しては、男は長女の友人宅にも嫌がらせをしていたとあり、長女の関係であることは間違いない。だが、私には「リダイヤル」がどうにも引っかかる。真相は、長女が知っているのではないか。  

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今日の猫猫塾「世界史」で、デギン・ザビがギレンにヒトラーの話をして、ギレンが「中世紀の人物ですな」と言った、と言ったら、三ツ野くんが「旧世紀」じゃないかと言う。ええっ? と驚いていろいろ検索したが「中世紀」だよなあ…。 

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同志社女子大学の玉田佳子教授からご著書を送っていただきました。18世紀英国の、女性作家による「煽情小説」「教訓小説」を扱ったもので、18世紀には大衆小説がなかったとか思い込んでいる人は手にとっていただきたいです。

擬装する女性作家―十八世紀イギリス女性作家の戦略

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