七瀬ふたたび

 観た。最後で原作の冒頭へ戻るが、脚本は『スチュワーデス刑事』の伴一彦である。演出は笠浦さん。『家族八景』はどうも筒井氏が映像化を許さないらしく(されていたらしい)、いつも「ふたたび」である。知らない人は何が「ふたたび」なのかと思うだろう・・・。
 内容はともかく、かつて高校時代に多岐川裕美主演で放送された際、「原作 筒井康隆」というのがとても眩しかったのを思い出したが、筒井さんというのは、どうも谷崎潤一郎のような人だと思った。
 むろん作風は、奇想という点では似ているが全体としては似ていない。作品が売れて、かつ純文学作家としても認められていて、かといって大江や村上春樹のように何かに悩んでいるという感じではなく、生活を楽しんでいるというあたりが。「タイムトラベラー」なんて、筒井氏30代だものなあ。
 あ、それはそうと「七瀬」シリーズを読んだりドラマを観たりすると、本物のキチガイが、自分も同じだ、と思うようだ。

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 森岡正博の『草食系男子の恋愛学』を立ち読み。最後の参考文献表に『もてない男』があがっていたので意外に感じた。森岡氏が創価学会員だと書いたのは私である。それは「学会員さんのページ」というサイトに森岡氏のサイトがリンクされていたからである。この場を借りてお詫びする。
 しかし、若い頃もてなかったという話をさんざん繰り広げつつ、この本に書かれたことを実践して、好きな女性から相手にしてもらえたのかどうかが全然分からないというのは困る。しかし森岡、てっきりゲイだと・・・ああ確認しないで書いちゃいけない。森岡さん、ゲイですか?

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呉智英さんの『読書家の新技術』に、柳田国男は弟子の岡正雄アナトール・フランスの小説をフランス語で読んでいたら、小説なぞ読む暇に勉強しろ、と言った話を引いて、教養のあり方が変わったのだ、と書いていたが、岡谷公二の『殺された詩人』(新潮社、1996)を読むと、柳田が激しく小説を嫌っていたことが分かる。若い頃詩人だった柳田は、悲恋をへて文学と手を切ったと。佐々木喜善にしても、文学者志望だったことから柳田と疎隔ができたという。
 (小谷野敦