寺尾紗穂さんの謎

 寺尾紗穂さんが「メジャーデビュー」したらしい。そのアルバムのタイトルは「御身」。
 寺尾さんと面識はないが、大学院の後輩だ。学生時代からバンド活動をして、CDも出している後輩がいるとは聞いていた。修士号を取得して、音楽家としてやっていくようだが、修士論文「評伝川島芳子」を本にするらしい。「天は二物を与えず」なんて、もはや死語だが、それでも、東大の大学院を出て研究書を出してミュージシャンでもあるなんて、凄い。加藤登紀子だって小椋佳だって、大学院までは行かなかったし研究書なんか出していない。
 で、気になるのはこの「御身」というタイトルで、買ってはみたのだが、どこにもこのタイトルの由来は書いていない。
 実は私は2002年12月に、東大駒場比較文学研究室の恋愛シンポジウムに出て、源氏鶏太の『御身』を論じている(『恋愛の昭和史』に組み込んだ)。当時、都立大の学生だった寺尾さん、進学する気で、聴きに来ていたのかなあ。でも直接尋ねて「申し訳ありませんが、関係ありません」と言われたら、寂しいから、訊かずにいようっと。
 そういえば荻上チキさんがちくま新書を出すようだ。これも、若いなあ。しかし、正体を隠しているチキさん、写真とかプロフィールとか、どうするんだろう。もし正体を隠したまま、写真なし、履歴もなし、ただ「ブロガー」とだけ書いて出したら、「狐」みたいな、活字世界の匿名ということになる。しかし、狐=山村修は、コントラヴァーシャルな議論をしたわけではない。もしチキさんが、履歴も実名も性別も隠したまま、コントラヴァーシャルな議論を始めたら、私はどうしたらいいのだろう。
 その時は、私は敢えて、チキさんの正体を暴かざるをえないだろう。