川村湊先生!

 毎日新聞文芸時評で、川村湊川上未映子の「わたくし率 イン 歯−または世界」を評して「谷崎潤一郎の『過酸化マンガン水の夢』のような、歯科医院の幻想譚とも読めるものだが、ここで使われている関西弁は、谷崎作品のような・・・」と書いている。川村先生、「過酸化マンガン水の夢」のどこに歯科医院なんか出てくるんでしょう。あれは戦後、松子と重子と一緒に映画を観に行ってシモーヌ・シニョレに感心して、宿屋で寝ていたら変な夢を見る話で、武智鉄二の「紅閨夢」の原作の一つになったもので、歯科医院の幻想っていったら、そりゃ戯曲「白日夢」のことでしょう。武智鉄二関係で混同しましたか?

 (小谷野敦