評伝観世榮夫

 書店で『評伝観世榮夫』船木拓生(平凡社)を見つけた。自伝が出たばかりで評伝が出るか。谷崎恵美子との結婚のところを立ち読みする。恵美子の兄の妻が「『痴人の愛』などの作品の触媒となった」(大意)とあったが、これは間違い。恵美子の兄の妻といえば渡邊千萬子さんだが、それなら『瘋癲老人日記』のモデルである。しかし武智鉄二の評伝が出てほしいなあ。

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分が悪い時は沈黙を守るという権力者的振舞いを32歳にして身につけ、新刊紹介のために新聞記事で「大川周明の著作新発見」などと、何も昨日今日発見したわけでもないのに記事にしてもらうあたり、実に老獪な老教授めいた中島岳志だが、『諸君!』1月号のウッシー牛村さんの記事でもう『パール判事』は息の根を止められるだろう。(もっともこれで論争になっても、学問的にはheuristicなところはないがね)