渡部直己との対談

 『サイゾー』六月号であるが、誌面に出なかったものもあるし、本人の感想です。
 まず、「タブー」に関する特集なので、天皇については他でやるだろうと思ったのだが、渡部氏はどうも天皇ものを取り上げすぎだった。(やはり他にあった)。私としては、今現在の文壇のタブー作家の話を主にしたかったのだが、渡部氏は昔の話が多く、大江健三郎石原慎太郎がタブーだと言うのだが、大江タブーはノーベル賞をとった13年も前のことで、まあ数年前にも『週刊朝日』「蝿」事件はあったとはいえ、小林秀雄賞をとった荒川洋治の本でもずいぶん悪く書かれているし、石原のほうは、リベラル系メディアでは相当悪く書かれていて、タブーではないだろうと思った。これは誌面に出ている。
 あと村上春樹の悪口は当然ながら、宮本輝高樹のぶ子が純文学作家として振舞っていることにも疑問を呈したのだが、これは載らず。宮本輝は、選考委員としての悪口はずいぶん言われているが、作品そのものが大衆小説だろう、ということ。あとは川上弘美小川洋子のような癒し系が受けるのだ、みたいな話。
 渡部氏が、25年も前に死んだ吉川幸次郎の『水滸伝』の誤訳の話などしてそれが載っているのは疑問。今さら吉川天皇でもあるまい。あと『ユリシーズ』の誤訳の件も、そりゃ丸谷才一というより、東大英文科主任、日本英文学会会長だった高松雄一こそが責任を負うべきものだろう。もっとも私自身は、『ユリシーズ』に興味なし。
 あとは、批判タブーの作家として、大庭みな子、津島佑子富岡多恵子をあげた。河野多恵子もいくぶんタブー化しているが、大庭なんて、どこがおもしろいのだ。大庭を評価しない点で、江藤淳上野千鶴子は意見が一致していたようだが、江藤が死んでから、睨みの利く批評家がいなくなった。
 あと田中和生の悪口で盛り上がる。渡部氏曰く「かつて、山崎行太郎を史上最低の文芸評論家と言ったが、田中は・・・」それ以下、という含み。適当に作家を褒めていれば法政大の専任になれる、という仕組み。あとは、陣野さんね。渡部氏も私も、陣野俊史については、言いたくないけど、文壇渡世がつらそうだなあ、といった話だった。
 あ、そういえば渡部氏、サッカーの報道についてあれこれ余談をしていたが、まるでサッカーに興味のない私には、何の話だか全然分からなかった。
http://d.hatena.ne.jp/gaikichi/20070518
 内田栄一の『反合法出版物・日本共産党50年伝』なら持っている。私に問い合わせてくれれば良かったのに。

(小谷野熱し)