「渇水」の原作と吉屋信子「鬼火」

河林満「渇水」の原作を読もうとしたら、杉並図書館では角川文庫は買ってくれなかったので、単行本が14人くらい待ちになっていたから、初出の『文学界』を借りてきて読んだ。選考委員は畑山博池内紀、青野聡、宮本輝津島佑子で、うち三人が故人になっていた。

 比較的短い小説で、最初のほうは映画と類似しているが、最後が、はじめに水を止めた家の姉妹が鉄道自殺するという嫌なあと味を残しており、映画ではここが改変されたのが分かる。

 これが、吉屋信子「鬼火」に似ているという人がいた。これは『婦人公論』に1951年に載った、さらに短い掌編みたいな小説で、ガスの集金人が、ガス代の払えない家のおかみさんに、体で払ってもらうぞみたいなヤクザ的な脅しをかけて、またやってくるとおかみさんが首を吊っているという話で、偶然の類似か、読んでインスパイアされたか、微妙なところだが、女流文学者賞を受賞したというから、文學界新人賞芥川賞の選考で指摘されても良かったろうと思われる。

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