十年ほど前か、呉智英さんと電話で話した時に、呉さんにシナ人の知人ができたが、しばらくたって気心が知れてきたところで、「実は俺、シナって言うんだけど」と話したら、まあ分かってくれたという話。多分、片言の日本語はできるが読めないという人だったのだろう。私が、じゃあそれまでどうしていたんですか、と訊くと、いやーそりゃ「あの国」とか「君の国」とかいろいろ言い換えて大変だったよ、と言っていて、それは妙におかしかった。
 ところで、漫画の中で子供が漫画を読んでいるシーンがあると、記号的表現として子供がゲラゲラ笑っている。私は子供のころからこれが不思議で、私は『のらくろ』も読んだが、『サイボーグ009』や『デビルマン』が好きで、そりゃ少しはギャグもあるが、笑って読むものではない。
 『ロジャー・ラビット』という映画を観たら、これはアニメのキャラクターが登場するんだが、盛んに「アニメは笑いだ」みたいなことを言っていて、アメコミだって『バットマン』とかあるだろう、と不快になった。まあ、と言うと「コミック」という語自体が「コミカル」から来ているわけなんだが。