「ソフト/クワイエット」とピーナッツアレルギー

「ソフト/クワイエット」という映画を観た。全編ワンカットという触れ込みで、しかしこういうのはカメラが手振れするから観ていると酔う。

 アメリカの田舎町で幼稚園の教員をしている30代のやや美人めの女が、知り合いに声をかけて五人で集会を持つのだが、それが実は白人の権利回復運動で、そこでは穏やかに、白人以外の者が優遇される現状を憂えている。概して学歴は低そうだ。しかし牧師に、通報されないうちに出て行ってくれと言われ、仲間の一人が経営しているリカーショップ(酒屋)へ行くと、中国人の姉妹二人が入ってきて、喧嘩になる。この姉妹は、仲間の兄のレイプを告発したことがあるらしい。

 白人女らは、裕福そうな中国人の家をいたずらで襲撃しようと計画する。主人公の夫は、制止するのだが、腰抜けと言われて、監視のためついてくる。二人は留守で、女たちは鍵を見つけて中へ入り、パスポートを見つけて焼こうとするのだが、中国人が帰ってきて、いたずらだと言いつつ手を縛り口にガムテ―プを貼ったりして、そこにあったスナックや酒を口に押し込むと、片方が苦しみだす。もう一人が、ピーナッツアレルギーなのよ、と言い、白人女が薬を持ってくるがもう死んでしまっている。侵入者同士の怒鳴り合いの間に、どういうわけかもう一人の中国人も気を失ったらしいが、彼らは二人の体を袋に入れて近所の湖へ捨てて完全犯罪にしようとする。

 このあとは書かないが、二人で住んでいて片方がピーナッツアレルギーで死んでしまうほどなら、なんでピーナッツが入った食べ物が置いてあるのか、またもう一人の中国人はまるで死んだみたいに言われているが、いつどうやって死んだのか、シナリオの詰めの甘い映画であった。

小谷野敦