中学校の女子同級生

 松本零士の「インセクト」だったかに、もてない男が昔の同級生女子を呼び出して嫌がられるというのがあった気がするが、私のように男子高校へ行った男には、中学の同級生だった女子に、もわあっとした幻想を抱くことがあった。

 あれは高校三年の時だったか、とにかく受験前のことで、私は一人で家にいたが、玄関のピンポンが鳴った。ちょっと遅れてドアを開けたが、誰もいなかった。要するに大した人ではなかったのだろうが、二階の自分の部屋へ帰って、高いところの窓から外を見ると、歩いていく女の後ろ姿が見えた。私はそれを、中学の時同級生だった×××××さんという女子だと、なぜか思い込み、いま私を訪ねてきて、すぐ帰ってしまったのだと思った。時間的にそれはおかしいし、その人がいきなり訪ねてくる理由などまったくなかったのだが、受験前で私は何か妄想を抱いたのである。

 この話はまったくこれだけだが、実に男子校など行くものではない。