「マー姉ちゃん」の話

 NHKの朝の連続テレビ小説マー姉ちゃん」が始まったのは1979年4月で、私が高校二年になる時だった。私は7時半には家を出ないと間に合わないから、あまり観られなかったが、夏休みには割と集中して観ていた。

 九月になって登校すると、友人だったOが、昼休みに、担任の教員がいる室へ行って「マー姉ちゃん」を観ようと言い出した。別にその日が特別な日だったわけではなくて、何だか毎日観る気でいるみたいだから、「そんなことしていいの?」と訊いたら、「いいよいいよ」と言って連れていかれて、担任に頼んだら見せてくれた。

 翌日も行ったのだが、担任もさすがに毎日とは思わなかったらしく、私たちがテレビ画面を観ている途中で、「なに、毎日来るの?」と訊くから、そうですと答えると、「そりゃあ許されないな」と言った。あっと思って二人で緊張しつつ画面を観ていたが、Oが「おい、帰ろう」と言ったから、二人で退室した。

 私にはOが、毎日観るなどということがなんで許されると思ったのかそれが不思議だった。