梯久美子は「島尾ミホ伝」を延々連載中だが、『愛の顛末』というのが出た。これは文壇情炎史みたいなもので、ミホ伝に比べたら余技的というほかあるまい。
中に二つ間違いがあり、宇野千代が梶井基次郎と知り合ったのを「川端(康成)の紹介」と書いている引用があるが、これは昭和二年の七月で、川端は舞台の湯ヶ島にはいない。宇野の記憶違いである。
あと210p、吉野せいの『洟をたらした神』の大宅壮一ノンフィクション賞での扇谷正造の選評で「稟質」に「りんしつ」とルビが降ってあるが、「ひんしつ」の間違い。原文の間違いか改めて振ったかは知らないが、よくある間違いである。