書店の店頭に『いけてる本いけない本』という小冊子が、季刊くらいの感じで置いてあり、見つけると立ち見して、面白ければ持ち帰る。編集者が中心に書いているようだが、「いけない本」のほうが面白い。今日びのマスコミは褒め書評しか載せないからである。
 今回は七つ森書館の上原氏が、いけてる本の三番目に『川端康成伝』をあげてくれた。最後の自殺のところ、『現代文学論争』に詳しく書いたから細かいことは省いたのだが、重複してもいいから書いてほしかった、としている。だがこれは川端が死んでから五年後のことで、重複したらしたでガタガタ言うやつがいるのだ。
 あと講談社現代新書の『ウルトラマンが泣いている』をいけない本にして、金城哲夫に「かねしろ」とルビが振ってあった間違いをあげつらっているが、これはしつこい。だいたい栃光を名のったことのある金城という力士もいたし、金城一紀もいて、いずれも「かねしろ」。しかもこれはおそらく、編集者が振って、著者が見落とした可能性もある。いずれにせよ、本というのはもうちょっと全体を見て批判すべきものではないか。