円地文子の『鹿島綺譚』(集英社文庫)を読んでいたら、これは「ししじま」と読み、熊本県の獅子島のことである。東京の人類学の学者たちが、この島の近親姦について調べるうち、学者の間で恋愛事件が起きたりするという通俗小説で、1963年『文藝春秋』に連載されたものである。
 しかるに読んでいくと「何等親かの親戚」というのが出てきた。「何親等」の間違いである。これは「六頭身」のせいで間違えやすい(以前は「×等親」という表現もあったらしい)。次のページでは「劣性遺伝」というのが出てきたが、これは、近親姦で悪い遺伝が出るという意味で使ってある。これも間違いである。