「鳴門秘帖」補完計画

 1977年から78年、私が中学三年生の時に、NHKで放送していた吉川英治原作『鳴門秘帖』が好きだったのだが、映像は残っていないのだろうか。私は部分的に録音してある。
 何しろ脚本が石山透である。『新・八犬伝』と『プリンプリン物語』の間にある。主役の法月弦之丞は田村正和、語り手が古今亭志ん朝お十夜孫兵衛が江原真二郎甲賀世阿弥日下武史、見返りお綱が三林京子、旅川周馬に角野卓造と、なかなか濃い配役だが、あとお米が小林麻美はいいとして、お千夜姫が原田美枝子で、これは全然お姫様に見えなかった。
 だがここに、ゲストとして平賀源内役で山口崇が出ていたのだ。山口は前年の大河ドラマ平貞盛をやり、ラジオ「音とたかしと昔ばなし」もやっていた。もちろん、「天下御免」以来の再登場で、その後「びいどろで候」で三度、平賀源内をやる。で、この源内のテーマ音楽というのがあってこれがいい。
 法月弦之丞といえば、大量殺人鬼みたいに毎回毎回敵どもをばったばったと切り捨てているのだが、源内がそれを見て、やんわりと、「なあ弦之丞さん、あんたら剣客は、人を斬る。斬るのはたやすいが、私は医者だ。人一人の命を助けるってのは、これは斬るのよりよっぽど難しい」とか言う。するとそのあと、チャンバラシーンになって、弦之丞は、斬らず、峰打ちか何かで切り抜け、あとで源内に「私にはあの時のあなたの言葉が聞こえたのです」などと言う。もっとも次の週からはまたバッタバッタだったんだが。
 この時の源内は、秋田で恋人を見つけたらしく、二人で姿を消してしまう。あの女優、誰だったっけなあ。
 実は「かぐや姫の物語」の、月から迎えが来る時の音楽が、いくらかこの源内のテーマに似ていたので思い出したのだが、このドラマ、復元したいものである。