作家の末路

 よしもとばななは最近どうしているのかと思ったら、作家としては半ば終り、オカルトの人になっていた。そのオカルト満開の最新刊は、アマゾンレビューでは絶賛されていて、そりゃオカルトでない人はいちいち読まないからである。
 私が阪大にいた頃も、博士論文まで書いたのにオカルトな女子院生がいて、鏡リュウジがどうとか言っていて、私がバカにすると「かわいそうな人…。眼に見えるものしか信じられないのね」なんて言っていた。その後消息不明になって消えてしまったが、まあ妥当なところだろう。
 芥川賞をとって二年もたたない諏訪哲史は、第二作『りすん』がアマゾンでレビューがまったくつかない状態。しかもその受賞作『アサッテの人』は、実はトゥレット症候群という病気の人を描いたのではないかと囁かれているらしいが、そのことが議論されているのは2ちゃんねるくらい(可能涼介『圧縮批評宣言』に書いてあった)。
 病気関係で言うと、重兼芳子の「やまあいの煙」が気になったことがあるのだが…。

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http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD15993/comment.html
 映画「さすらいの旅路」がディケンズの「同名小説」を原作に、とあるが、原作は「ディヴィッド・コパフィールド」である。もし誰かが「さすらいの旅路」の邦訳題で出していたならまだいいが、それもない。(あっ分かった。英語の紹介文をそのまま訳したんだな。原題は「デヴィッド・コパフィールド」だもの)

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井上ひさしの戯曲「ムサシ」は、報復の連鎖を断ち切ろうという話らしいが、連鎖しなくても、井上ひさしは報復されたら嫌だよね。前の奥さんから、殴った分だけ殴られたり、猫に火をつけられたりしたら。自ら暴力をふるった人が、報復を否定するのは滑稽である。
 なんで蜷川幸雄井上ひさしの戯曲なんぞ演出するのだろう。井上の芝居で面白かったのはせいぜい『化粧』で、『表裏源内蛙合戦』なんて、誰がどう演出しようと、面白くなるはずがない。

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 筒井康隆ドストエフスキーを尊敬している。そりゃあそうである。筒井は旧家の出で、父親は立派な学者で、康隆と対立していたし、筒井は同志社大卒である。キリスト教大学である。
 若い頃その筒井康隆に心酔していた渡部直己もドストに熱中したが、その父は陸軍士官学校卒の自衛官で、最後は統合幕僚会議議長だった。

 (小谷野敦