国会図書館の関西館はどうも東京より質が落ちる。郵送複写を頼むと、時おり関西館になるが、先日、某学者の記念論集に載っている略歴を複写しようとして、「年譜のみ」と書いて申し込む。これをやるとたいてい、確認の電話がかかってくるのだが、それがどういうわけか、午後五時過ぎなのである。今回は16日に掛かってきたのだが、どうも頭が悪いのか、もごもごした口調で、「略歴・著作一覧」とありますがこれでいいですかと言うから、「はい、年譜だけです」と答えた。
 そうしたら、「著作一覧」まで送ってきた。それで連休明けに電話して文句を言うと、二度ほど、担当が変わってあちらからかけ直すということがあり、とうとう本職員らしいのが出てきた。電話してきた男は、「著作一覧もいるのか」とは訊かなかった、と認めているから、それじゃしょうがないでしょう。「年譜といったら略歴のことでしょう」「いえ、まあ年譜の中に著作が書いてある場合もありますね」「ありますよ。でもこれははっきり分離してあるでしょう」という押し問答でとうとう怒鳴りつけて、値段を引かせた。
 郵送複写係というのは国会図書館の下部組織らしく、電話をかけて確認したりするのは正職員じゃないのだろう。しばしば、普通の漢字もまともに読めない。それが関西館となるとさらに学力低下するようである。
 するとこの男、ほどなくまた電話をかけてきて、私が別途頼んでおいた、『日本戯曲全集』の山崎紫紅「千利休」について確認してきた。「いやあ、日本戯曲全集というのがたくさん出てきまして」「『千利休』で検索すりゃいいんですよ」「はあ…」「著作権は大丈夫ですか」と訊いたところから、この男、勢いづいて、長くなりますがいいですか、と言い、ええいいですよと言うと、没後五十年で著作権は切れますが、これに例外がありまして、定期刊行物、といいますのは・・・・と始めるから、そんなことは分かっているが、『日本戯曲全集』は定期刊行物なのか? と訊くと、「あっ、違いましたかね」と間抜けなことを言う。「違います。山崎紫紅は著作権はとっくに切れています」
 俺を誰だと思ってるんだとは言わないが、話をしていて、この人はどの程度分かっている人か、という判断もできないのかねえ。
小谷野敦