山本芳明『カネと文学』(新潮選書)はどうも変で、これは大正八年から始まると言えるのだが、純文学作家が食えたかどうかという話が延々と続いて、明治から大正期の通俗作家の話が全然出てこない。ようやく昭和に入って、吉屋信子吉川英治が出てくるのだが、初学者がこれを読んだら、膨大な通俗作家たちがいたことを知らずに終わるのではないかという気がする。