『ウルトラセブン』の最終回で、シューマンのピアノ協奏曲が使われていることはよく知られている。「ファンタスティック・コレクション」で満田かずほは、ラフマニノフのピアノ協奏曲を使うつもりでいて、音楽担当の冬木透に持ってきてもらって聴いたら、旋律が違う。楽曲名を間違って覚えていたのだ、とあり、冬木が用意してくれたものの中から、シューマンを選んだ、と書いてある。これは私の『中学校のシャルパンティエ』(青土社)にも引用されている。私はそこで、満田が考えていたのは、グリーグではなかったか、と書いた。
 青山通の『ウルトラセブンが音楽を教えてくれた』(アルテス)は、このエピソードに始まって、シューマンの協奏曲のいろんな演奏を紹介した本である。だが、シューマンが使われた経緯については、以前満田が書いたこととは微妙に食い違っている。ここでははっきり、当初はグリーグを考えていて、間違えてラフマニノフを頼んだが、冬木がラフマニノフでは違和感を感じてシューマンを使ったとなっている。
 だが、「ラフマニノフを頼んだ」といったって、ラフマニノフのピアノ協奏曲は、有名なものだけで二番と三番があり、どちらの話をしているのか分からない。冬木は、満田がグリーグを考えていたというのはあとから聞いたと語っているが、「ファンタスティック・コレクション」では、グリーグとは書いておらず、変だなと思ったものである。
 青山は、「セブン」で使われたのがカラヤンリパッティの録音であることをつきとめており、その主張は、クラシック音楽は、演奏によって違うということらしいが、まあ違うといえば違うが、ちょっと誇張し過ぎだし、実はこのような主張は、一種のステマである。青山は1960年生まれで、音楽之友社に勤めていたから、おのずとそういう主張を身につけたのだろうと思うしかない。だが、年齢に比して、『ウルトラQ』から『セブン』まで、まるで大人のようにきっちり、初回で理解して観ていたと書いているのが、どうも信用ならない。それにこの本は円谷プロの全面協力でできているから、当然ながら、第12話にはまったく触れていない。ブログでは書いてるんだけどね。
http://paienne.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/12_be50.html
 なんか、やな感じ。
 あ、本自体は、「セブン」の話というよりシューマン協奏曲の話です。