奇妙なアマゾンレビュー

 といっても私の本の、ではない。小澤浩(1937年- )という宗教学者の『ザ学長』という本である。おざわ、と読まれそうだが、これでこざわと読む。恐らく何度も「おざわ」と読まれてきただろうと思うと、「おやの」だの「おのや」だのと言われてきた身として何やら共感を覚える。小澤は富山市出身、ICU卒、早大院から富山医科薬科大学をへて富山大学教授、人文学部長をへて、2001年学長になったが、過去入試の採点にミスがあったことを公表し、結果として自身が責任をとって三か月で辞職に追い込まれ、そのため名誉教授にもなっていない。学長選の前に、採点ミスの隠蔽は知っていて、学長になってすぐ公表したのである。当時の新聞をにぎわしたが、まあ世間では忘れているだろう。

ザ学長―退き口の戦いを終えて

ザ学長―退き口の戦いを終えて

 これに、レビューがついている。ご覧のとおりである。私は、学長になどなる人で、根っからの善人などいるはずがないと思っている。小澤は、周囲に推されてなったと言っているが、それは要するに派閥であって、派閥というのはいくら人望があっても、自然にできたり、ましてや本人の意思とは無関係に学長に推して実現したりするものではない。
 しかし、刊行当時評判になった本ではないし、このレビュアーは刊行後わりとすぐ、これを書いている。しかもレビューはこれ一つだから、ははーん関係者だな、と思わせるのである。しかも名前はfledermaus(こうもり)である。
 このレビューはいいがかりめいていて、「SU」と個人を特定できる書き方をしているなどと言うが、Sの人が多いからそうしているのだし、告発の書なのだから個人を特定できて悪いはずがない。学生のプライバシーともあるが、別にそんなことは書いていないし、採点ミスで入学できなかった学生らへの陳謝も、ちゃんと入っている。言いがかりというか、ほとんど嘘に近い。
 とはいえ、あまり小澤という人の考え方に私は同意できないところもあって、たとえば肯定的に描かれている教授が、授業中に缶ジュースを飲んでいる学生の缶をとりあげて、中身を頭からかけた、とかいうのだが、私は授業中の飲み物は許可していた。パソコン教室ではいけないことになっているからそれはまた別だが、それならなおさら頭からかけちゃいかんだろう。
 それとは逆に、授業中に「富山大なら両親とも大卒というのはいないだろう」と発言した教授が問題視されているが、別にそれくらいいいのではないか。
 で、中にイニシャルで出てくる人を特定しようとしたのだが、何しろ富山大なので情報が少なく、ほとんど分からなかった。