新潟大学三浦淳先生のサイトより。
http://miura.k-server.org/newpage1126.htm 

田中純 『建築のエロティシズム 世紀転換期ヴィーンにおける装飾の運命』(平凡社新書)★★ 著者は1960年生まれの東大教授。授業で学生と一緒に読んでみた本なのであるが・・・・率直に言って「失敗した、学生諸君、ごめんなさい」な本でした。建築家アドルフ・ロースを中心に据えて、19世紀末ウィーンの画家や思想家など色々な人物 (フロイト、ヴァイニンガー、ヴィトゲンシュタイン、ココシュカ、などなど) の特徴や相互影響などを述べている。というだけなら別に批判する必要もなく、私も 「多少専門的かもしれないが、それを含めて学生に知的な興味を起こさせるのにはいいだろう」と考えていたのだが、この本のダメなところはその叙述の仕方である。因果関係をはっきり書かず、漠然とした類似や相互作用を分かりにくく暗示的に書いているだけで、個人的なエッセイとして私家版で出すのはいいかも知れないけど、東大教授が大手出版社の新書として出すような本じゃないですね。というか、出してもらっちゃ困るのですよ、こういう本は。あとがきによると、この本の原稿は数奇な運命をたどり著者の手元で眠っていたものを、平凡社の松井純という編集者が拾ってくれたそうだが、松井純には天罰が下りますように。

 ははは。東大教授にも容赦ない。