大学動物園

 矢吹樹というこれは変名らしいが、大学医学部教授らしい人の自費出版『大学動物園』が、アマゾンなどで酷評されているので取り寄せて読んでみたが、そんなに変な本ではなかった。だいたい実話だろうし、実際大学にはこの程度の教授だの学生だのはぞろぞろ実際にいる。どこの大学もこうだと思わないでください、なんて書いている奴がいたが、まあ私からすれば、どこでもだいたいこんなものである。
 してみると、酷評していたのは、裏の実情を知らない学生とか、知りつつ、こんなことをばらしやがってと思っている教授その他大学関係者、あるいは登場人物そのものではないかと思う。まあこの本はもちろん実名秘匿で書かれているわけだが、これなら私の『文学研究という不幸』が妙な攻撃に遭ったのも当然だと思った。
 まあ本人も、自分で変人だと言っているし、私より禁煙ファシズムに寛容だし、普通の人だろうと思う。血液型で性格が決まるように書いているのは医学者なんだからまあ冗談なのだろうが、本気にする人もいるかもしれないので、今後はやめてもらいたいと思う。それにしても手土産にこだわる人だな…。
(付記)あーあと、ストーカーおばさんから書留が来る件だが、それは拒否できる。郵便屋が、書留だから拒否できない、と言ったというのはにわかに信用できないが、本当だとしたらかなりまずい配達人だ。
 それとこの人が噂されている人だとしたら、何か聞いたこともない大学で博士号とっているけど、大丈夫なのか? そんな医科大学出た医者にはかかりたくない、というような…。しかも奥さんも医学博士かと思ったら学術博士だし。

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 甘露純規『剽窃文学史』(森話社)を読んでみたのだが、明治期を対象とした実証的な論文集で、いいのだがところどころ詰めが甘い。序文で、前近代では著作権概念が乏しく、『好色一代男』が『源氏物語』を、『八犬伝』が『水滸伝』を下敷きにしているとあるが、これらはまるで似ていない例で、むしろシェイクスピア作品にネタ本があることとか、『仮名手本忠臣蔵』がそれ以前の赤穂事件ものの集大成であることなどを挙げるべきだろう。また翻訳というものが近代になって始まったかのように書いてあるが、仏典の漢語訳、『水滸伝』の通俗訳などが視野に入っていないのかと疑問だった。また「撫象子」というのが出てくるが、明らかに巌本善治なのに、なぜそういう書き方をするのだろう。比較文学会員にしては、前近代と外国に関する知識が乏しい気がする。

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うちの近所の図書館では、区内にある本は15冊まで予約できるのだが、他区ないし都立から借用するのは五冊が限度である。それが、すぐ来ればいいがなかなか来ないから、新たに取り寄せたい本があると、前のを取り消して入れる。しかし取り寄せ中のものは、もう発送されているかもしれないので、気が咎める。しかし背に腹は代えられない。もっと限度を増やしてもらいたいのである。
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