阿川尚之

 阿川尚之といえば、慶大教授で阿川弘之の息子であるが、かつて反米論議が盛んだったころ、『アメリカが嫌いですか』を上梓した。その頃新聞紙上で阿川の、米国は黒人公民権とかゲイ問題とかそういう民主主義の諸問題を先どりして解決してきた国だという論説を読んで、なかなかいいことを言う人だと思った。
 しかし著書は読まなかった。それで近頃『アメリカが嫌いですか』を読みかけたのだが、これがいけない。何しろ有名作家の息子だし、高校からだが慶應だし、米国留学体験が書かれているのだが、あまりに恵まれていて私なんぞとは雲泥の差で、これならまだ、立場の上では似ている藤原正彦のほうが共感できたくらいである。日本ではガールフレンドもいたがアメリカではなかなかできず、などと書いてあるものにどうやって共感しろというのか。 
 それに、少年時代に病気をしてセブンズデーアドベンチストの病院に入院したというが、セブンズデーアドベンチストというのは今日の禁煙ファシズムを先導しているキリスト教団体である。それで阿川もタバコが苦手になったと書いてあるから、これはいかんと放り出した。 
 ところで悪質な禁煙ファシストの信州大の柴野均は『ムッソリーニ』など刊行しているが、ファシストだからファシズム研究をしているという、珍しい例であろう。