島田謹二の「小説」

 『坂の上の雲』における、広瀬武夫の「恋人」アリアズナについて、別人ではないかという説が出ているというが、これは新聞の報道だけなので、論文になってみないと分からない。ところでドラマで、広瀬がアリアズナに日本語を教える場面があったが、これは島田謹二の『ロシヤにおける広瀬武夫』に書いてある。だが、これは恐らく島田の空想である。島田の、広瀬と秋山真之の本は、東大名誉教授が書いた伝記であり、史料に基づいたものと思われがちだが、どう考えても空想で書いた小説である部分がある、ということは「駒場学派」では周知の事実であった。