ウルトラマンタロウ研究

ウルトラマンタロウ』最後の、副隊長交代劇について、現物を観て考察した。『タロウ』はウルトラ六番目の弟で、ウルトラの父ウルトラの母の実子ということになっている。ただし、『ウルトラセブン』当時の少年雑誌の記事で、ウルトラマンはシルバー族、セブンはレッド族という説明があり、ほかにグリーン族とブルー族がいることになっていた。父と母はシルバー族で、タロウはレッド族だからおかしいのだが、どうせこの設定は大伴昌司あたりが書いたのだろう。
 ウルトラシリーズは、『帰ってきたウルトラマン』から四年続いたが、どんどん質が下がって行き、『帰マン』ではセブンと旧マンが二回だけ助けに来たが、だんだん兄弟やら父母やらが助けに来ることが多くなり、当初は、一応ドラマがあってしかるのちに怪獣が登場、だったのが、『タロウ』の頃はいきなり怪獣が出るようになり、造形は最悪の状態となり、ZATの扮装や戦闘機などまるでチンドン屋のようなデザインになり、半ばコメディだった。
 さてZAT隊長は名古屋章なのだが、途中から出なくなり、副隊長の荒垣(東野孝彦・のち英心)が指揮をとるようになった。隊員はほかに、主役の東光太郎(篠田三郎)に、男四人、女一人で、津村鷹志三ツ木清隆がいたが、三ツ木はほどなくいなくなり、もう一人も中途で消え、一時期はわずか五人で戦っていた。
 その東野副隊長が、51話で姿を消す。タロウは全部で53話である。理由はご多分に漏れず東野がスキーで怪我をしたため。しかし教えてくれた人によるとタロウはアフレコで、48-50話で、既に東野の声が違っていたという。これは確認した。なお50話は「怪獣サインはV」のタイトルで、ゲストに、当時「新・サインはV」の主役だった18歳の坂口良子がゲスト出演して、怪獣とバレーボールをやり、BGMに「サインはV」が流れる。私はこの歌、好きである。この回も脚本は阿井文瓶。
 51話は、例によっていきなり怪獣リンドンが出て、突然復帰した名古屋章を含むZATが出動、光太郎がタロウになってリンドンを倒し、ZAT本部へ帰ると、メガネをかけた中年の冴えない男がいる。これが三谷昇で、名古屋が「よう。久しぶりだな」と声をかけ、誰だろうとぼうっとしている隊員四人に、「何をしている!宇宙ステーションへ行った荒垣の代わりに来た新副隊長の二谷だ」と紹介する。
 その回は、例によって怪獣が復活し、これを倒すが、その間、隊員北島の結婚話が進んでいて、最後はなぜか仏式での結婚式になり、隊員らも出席するが、三谷はいない。この回の脚本が阿井文瓶で、三谷登場の部分は阿井の知らないところで挿入された可能性もある。
 しかし問題は次の52回である。脚本はベテランの石堂淑朗。いきなり三谷が、川べりでバーベルを上げたり走ったりとトレーニングをしている。名古屋のナレーションが入り、ZATでは半年に一度、隊員の体力テストが行われる。隊長と副隊長は免除されているが、二谷は自分も体力テストを受けるつもりらしい。
 さて宇宙では怪獣ドロボンと帰ってきたウルトラマンが戦っており、マンが負けてしまう。地上へ来たドロボンはタロウ出てこいと言いながら暴れ回る。二谷は宇宙での怪獣のレーダー図を見ながら「おい、あれは俺のいた基地の近くじゃないか。怪獣め、俺がいなくなったと知って攻撃してきたな」などと偉そうなことを言うが、いざ出撃したZATは負けて、副隊長機は怪獣の人質になってしまう。そこを、ぼろぼろになった団次郎が歩いてきて、光太郎に会い、ドロボンは宇宙での戦争にタロウを戦力にする気だと言う。そしてウルトラマンになり、副隊長と引き換えにカラータイマーを怪獣に渡し、体がぺしゃんこになって横たわってしまう。ドロボンはカラータイマーを胸につけて、ウルトラマンと二人分の力を持ち、光太郎はタロウになって戦うがかなわないし、カラータイマーを傷つけてはいけないから光線技も使えない。しかしマンのタイマーは三分しかもたないから、ほどなく点滅し始めて、タロウは怪獣をやっつけ(こういう間抜けさがタロウである)、タイマーを新マンに返す。
 ラストでは、光太郎がZAT本部へ帰ると、副隊長が末席に座っていて、副隊長失格だと言い、光太郎が慰めて、元の席へ戻る。
 さて、この52話は、もともと東野のための話だったと、さる人は言う。だが、この回の中心は団次郎だったはずで、何やら、一度も見せ場のないまま終わる三谷のために急遽書いたようにも見える。
 最終回には名古屋も出る。ここで登場するバルキー星人の顔って、ウルトラマンレオの没案のように思う。
 (小谷野敦