ああそうか

 ベースボールマガジン社『相撲』購入、時津海のところが空白の話題の番付を入手する(番付複製が付いているのはこの雑誌だけ。読売の『大相撲』にはない)。当初、ちと不思議だったのは、これまでにも、番付編成会議のあとに引退して親方になった力士はいるのに、なぜ今回珍例になったのかということだったが、少し調べて分かった。これまでは、番付発表の後で引退発表(及び手続き)をしていたのだ。五月場所前に引退した栃東がそうだった。つまり、廃業するならともかく、引退して親方になるなら、その発表および手続きは、場所直後の番付編成会議前、あるいは番付発表後、ということになる。初心者のために説明すると、番付編成会議本場所千秋楽から三日後、番付発表は本場所初日の二週間前の月曜である(初場所の場合少しずれる)。編成会議前に引退すれば、番付には力士としては載らないし、番付発表後であれば、今さら番付を変更できない。従って、時津海は、前時津風親方解雇直後に引退、襲名したため、変則的事態になったというわけ。
 高校生の頃からしばらく、私は『グラフNHK大相撲特集』を購入していた(現在は『ステラ大相撲特集』)。その内、NHKのこの雑誌は、八百長疑惑などについて一切書かないことに気づき、読売大相撲を読むようになり、中身が充実しているので『相撲』に変えた。NHKが相撲協会と癒着していることは相撲通周知の事実だ。だから、これから相撲入門したい人は(いるのか?)ベースボールマガジン社の雑誌を勧める。しかし同社創業者の愛人を、娘の工藤美代子は『それにつけても今朝の骨肉』で「錦蘭子」と書いているが、これは仮名だし、その出演映画のことまで書いているのに、ぼやかして書いているらしく、実は誰だか分からない。鶴田先生が生きていたら教えてくれただろうに。
 なお私の学生時代、「麒麟児病」という言葉があった。どの程度広く使われていたのか知らないが、一場所置きに勝ち越しと負け越しを繰り返すことである。麒麟児がそうだったからである。
 (小谷野敦