安全、安心なやり方

 組閣のニュースを見ていたら、天野祐吉が出てきて、例によってテキトーに悪口言って、ダメな大臣にはノーと言わなきゃなどと言っていた。議院内閣制なんだから、大臣へのリコール制度なんてないのだよ。自民党が嫌いなら、その自民党を第一党に選び続けている国民が愚民なんだ、って言わなきゃダメでしょ。もうこの天野という人は、20年近く、この手のつまらないコメントを言い続けている。今の日本では、自民党政権の悪口を言うのは、大企業の勤め人とか官僚でない、広告屋とか大学教員とかにとっては、安全、安心な道なんだよね。舛添先生、入閣おめでとうございます。もっとも、厚生労働省がこれ以上禁煙ファシズムを続けるなら、厚生労働大臣として先生を提訴することもありえます。

 松浦ジュテルが、『ガンバとカワウソの冒険』みたいな小説を出したらしく、あちこちで褒められている。以前私は、純文学が描く恋愛のほうが絵空ごとになって、大衆小説のほうが真実を描くようになった、と言ったが、このところ純文学は児童文学化している。そりゃあ、ネズミの話でも書いていたほうが、安全、安心だからね。ああ、大江健三郎は偉い。

 (小谷野敦