堕右翼本発見

 『朝日新聞のトンデモ読者投稿』という本を見つけた。どうせ右翼本で、見なくても中身は分かっている。しかしちょっと時間があいたので、書店で中を見てみた。
 朝日新聞のトンデモ投稿では、禁煙ファシストによるものを随分私も指弾したが、この本、見事にそういうのには触れていない。それどころか、2002年の投稿で「健康寿命」という概念を批判し、健康を押しつけるな、という投稿を取り上げていちゃもんをつけている。しかし不思議にも、これが「健康増進法」を批判する投稿であることは明らかなのに、そのことはまったく触れていない。日本が嫌いなのだとか政府が嫌いなのだとか、見事に的はずれな論評をしている。
 ははーん、やっぱり右翼としては禁煙ファシズムは「可」なのね。しかしこうやって的外れなことを書くあたり、正々堂々と禁煙ファシズムを打ち出す度胸もないというわけか。嫌煙権を批判していた福田恒存の手前もあるしね。
 ああ、劣化したな右翼。二十世紀までは、朝日新聞対右翼では、非現実的な護憲論に対して、圧倒的なまでに右翼の勝ちだったが、このところ、国民全体の保守化で、右翼もタガが緩んできたようだ。堕右翼本。
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 「ジョン・レノン暗殺」という表現に対して呉先生は、政治家でもないのに暗殺はおかしい、と書いておられましたが、長崎市長は「暗殺」なんでしょうか。別に政治的主張ゆえに撃たれたわけでもないようだし…。
 それにしても、戦前に比べると、戦後、政治家の暗殺は少なくなった。銃砲が規制されたとはいえ、浅沼稲次郎くらいか。
小谷野敦