「帰省ラッシュ」やめたら?

 最近は、腹が立つからなるべく新聞の中のほうは見ないようにしているのだが、今朝はうかっと朝日の投書欄なぞ見てしまった。帰省ラッシュの時は新幹線を全面禁煙にしろとか、喫煙車両でも車掌が注意しろとかいうもの。この人は、タバコの煙が嫌で帰省をやめた、と言うのだが、私は前々から、「帰省ラッシュ」をやめればいいと思っている。通勤ラッシュだって、時間をずらして混雑を緩和しましょう、と言っているんだから、みなで一斉にゲルマン民族のように大移動しなくてもいいではないか。帰省したいならすればいいが、それが盆と正月である必要性などどこにもない。会社が休みを盆と正月しかとらせないとか、子供の学校が、とか言うかもしれないが、学校は春休みがあるし、夏休みの終わり頃だってある。会社だって、休暇というのはあるはずだし、とらせないというなら厚生労働省で指導すればよい。
 何にせよ、正月に老人が喉に餅を詰まらせて死んだニュースのごとく、毎年二回ずつ高校野球のように「帰省ラッシュ」と言っていながら、これを緩和しようという発想は、政府や企業にはないのだろうか。
 こんなもの、ほかの国でもあるんだろうか。私は、ディズニーランドだの愛知万博だの、わざわざ人込みの中へ出かけていく奴の気が知れない。不断の渋谷でさえ苦痛だ。そんなに「みんなと一緒」でないと気が済まないのかね、愚民どもは。          (小谷野敦