こちとら作家貴族じゃねえ

 前にも書いたが、1997年ころ「中国新聞」から書評を依頼されたことがある。文春の「女のこころとカラダ」シリーズの一で、長男がどうとか言う本だったが、実は依頼してきた記者が「中国新聞」に自分で連載したものだった。

 私はそこそこ褒めた書評を書いたが、記者氏は電話してきて「ざっくばらんに言ってですね」と穏やかな調子ながら、もっとしかるべく、売れるように褒めてくれと言って来た。私はそれなりに憮然として、「じゃあそっちでいいように書き直してください」と言って、結果書き直したものが載った。

 この程度のことで、なら原稿を引き上げる、と言うほどのことでもないし、仮に今私がその手の依頼を受けても、こちとら印税だけで十分な収入のある作家貴族じゃないんだから引き受ける。それだけ。