小部春美さんのこと

 広島税務局長となった小部春美さんは、東大で私の一つ上である。最初の入試の時、教室の左側の一番前の席に座っていた。私は二番目の右端で、私の前に群馬から来た、柔道をやっていて、私と同じく一浪して、入学後は相撲部に属した小堀という、いかにもそういう感じの男がいて、私の左には開成で一浪の男がいたが、これは名前順だから、小宮とか小森とかいう男だったはずだ。珍しいことに、私とこの三人が、休憩時間などに会話していたのである。はじめは、小堀が私や小部さんに話しかけたのではないかと思う。小宮か小森か、この人は開成へ行っていた私の父方の従兄を知っていて、「小谷野にそっくり!」と言われてちょっと驚いた。私は父方の親戚とのつきあいがないから、会ったこともなければ名前も知らない。しかも開成は中退してしまったという。
 小部さんは、細面の、ちょっとした美人で、筑波大付属の出身だった。私はそれから一年の浪人の間、東大にはこういう才色兼備の女性がたくさんいるのだろうと夢想に耽ったりした。当時好きで読んでいた吾妻ひでおの初期作品「タイガーパンツ」に出てくる女の子に似ていた。実際に入学すると、そうでもないことが分かった。
 小堀とは、入学後も話す機会があったが、のち教育学部へ行った。その後どうしたか知らなかったが、
http://daisyoninn.asablo.jp/blog/2012/11/15/6634761
 群馬で司法書士をしていて昨年暮れ横領で逮捕されている。・・・・。
 小部さんのほうは、入学後は話すことはなく、一遍本郷の書籍部で見かけたが、文三から法学部へ進むというすごいことをやって(ほぼ全科目百点くらいでないとありえない)、とても私のような劣等生が話しかけられる雰囲気ではなかった。その後も、才色兼備の女性として読売新聞にとりあげられたりして、少しうっとりした。掛川税務署長になった時は、小部さんはヴァイオリンが弾けるから、地元のオーケストラに加わり、「姫」とあだ名されて親しまれ、一年で離任する際に、大蔵大臣宛、地元の人がシャレで留任の請願をしたりした。
 私の知っている中で女性官僚がもう一人いて、阪大時代に教えた権丈京子さんだが、これは五年阪大で教えた中でずば抜けた秀才で、性格もよく精神がタフで、しかもちょっと美人で、阪大から二人だけ外務省に入った。私から見ても、阪大にいるのが不思議な、東大か京大にいるはずだろうという子だった。私があまり、官僚がバカだと思えないゆえんである。

小部春美年譜

1962年 4-8月、東京都生まれ
1981年 筑波大学附属高校卒、東大教養学部文科三類入学
1983年 法学部へ進学
1985年 卒業、大蔵省入省、国際金融局で世界銀行を担当。 23歳 
1987年 英国へ派遣、EU経済を学ぶ  
1988年 大蔵省理財局総務課企画係長 
1991年7月 掛川税務署長     29歳
1992年6月 帰省
   EU政府代表部参事官
2004年 国際局国際機構課企画官
2005年 東京国税局課税第一部長
2006年? 国税庁課税部酒税課長
2008年7月 国税庁調査査察部調査課長
2010年 関税局業務課長
2011年7月 国税庁長官官房会計課長
2013年8月 広島国税局長  51
2014年7月 関税局審議官 
2016年6月 サイバーセキュリティ・情報化審議官 54
(後記:私に記憶の錯誤があり、小部さんと入試で会ったのは一回目、つまり私が落ちた時で、以後全部一年ずつ勘違いしていたので直した-2013年11月)