2023-11-22から1日間の記事一覧

中野重治「四方の眺め」に呆れる

中野重治という作家は、私が高校生の時に死んだが、プロレタリア文学の作家ながら言葉について厳格な人で、世間が総理大臣のことを「総理」と呼ぶのはおかしい、それは文部大臣を「文部」と呼ぶようなものだと言っていた。当時私はなるほど、と思って感心し…

博士号について

日本の人文系の博士号について、ちょっと説明しておく。夏目漱石の博士号辞退などを想起する人もいるようだが、あれは漱石が博士論文を書いたわけではなく、文部省が一方的に授与しようとした名誉称号だから、今言っている博士号とはまったく別のものである。…

平野謙「新刊時評(下)」を読む

面白そうな本が出てきたら図書館で借りて読みという具合で平野謙「新刊時評」上下を読んだが、下巻は1960年代から72年に大江の「みずからわが涙・・・」の「誤読書評」で書評の筆を折るまでと、75年の『中野重治批判』と共産党関係の本の書評まであった。下…