3点
力作ではあるが
かねてからの戦後アメリカ小説研究の成果に、五年ほどをかけて架空の小説家一人を描き出した力作だが、読むのが前半ではつらかった。何よりジュリアン・バトラーが極めて不快な人物であり、フォニイ感が激しかったからで、後半になるとジョージ・ジョンが前面に出てきていくらか読みやすくはなるが、この人物がジュリアンが好きだったのは美青年だったからか? という疑念もわく。恐らく架空の作家を描くという意味で、英訳されたらアメリカ人にはとても読めたものではないだろう。ところで高遠弘美が推薦しているのには驚いたのだが、高遠は同性愛嫌いではなかったか?