アメリー・ノトン  「殺人者の健康法」アマゾンレビュー

とても面白い
星5つ 、2021/10/31
戦後の海外小説は概して面白くないが、これは「ガープの世界」などとともに三本の指に入るくらいの面白さ。登場人物はほぼ二人だが、湾岸戦争を前にした91年、83歳のノーベル賞作家プレテクスタ・タシュが軟骨がんという特殊な病気で余命いくばくもないと知り記者が押しかけるが、一人目、二人目と、三島賞受賞時の蓮實重彦みたいな態度をとる作家に追い払われてしまう。作家はでっぷり太って醜い体形である。だが三人目の女の記者は、作家の66年前の犯罪と、その貴族の子孫としての来歴を明らかにしていく。作家の悪口雑言が筒井康隆を思わせる。これはアメリー・ノトン(ノートンは間違いらしい)の最初の作で、駐日ベルギー大使の娘で、天才であるらしい。女性記者の名前ニーナというのはチェーホフの「かもめ」から来ているのか。