高畑勲監督のアニメ映画「おもいひでぽろぽろ」のエンディングクレジットの最中、主人公は田舎から都会へ帰る汽車に載っているのだが、子供たちの幽霊みたいのがすいすい入ってきてヒロインを田舎へ帰す。この子供たちは、子供時代部分に出てくるヒロインの友達ではないかということだ。中にはヒロイン自身の子供時代も混じっているはずである。
新潮文庫で「第七赤毛のアン」となっている「炉辺荘(イングルサイド)のアン」は、母親になったアンとダイアナがアヴォンリーで再会するところから始まるが、二人が分かれる日の暮れころ、アンはこんなことを言う。
「ねえ、ダイアナ、いま、家へ帰っていくあたしたちを、昔のあたしたちが恋人の小道を走って出迎えるとしたら愉快じゃない?」
ダイアナはかすかに身震いした。
「と、と、とんでもない。愉快じゃないわよ、アン。わたしこんなに暗くなっているのに気がつかなかったわ。昼間ならいろいろ空想するのもいいけれど、でも……」(村岡花子訳)
私は、高畑さんはここを読んだなと思ったことである。